お金のためではない音楽活動がお金を集めてしまう話
ミュージシャンは一時期より稼げなくなりました。それなのに、将来ミュージシャンになって好きな事で生きていきたい!と叫ぶ若者は後を立ちません。
昔と比べて何が変わったかを冷静に考えてみると、やはりレコード〜CD〜コピープロテクト型合法ダウンロード〜ストリーミングという変化の流れです。この変化に伴って、お金が稼げなくなったと言われていますが、果たして? 時代は変化するのだからお金の流れも変わります。音楽家の立ち振る舞いも変化する必要があるのでしょうか?
今は、軒先ビジネスを頼ってる
Spotifyはプラットフォーム。営業力と店舗の広さが売り。音楽家はそこを借りて「格安で」委託販売してるのに近いかな。数は売れるんだけど指定単価でしか売れないから売上額が安いと。何で指定単価なのかというと、そこはプラットフォームの営業力や店舗の家賃が高いから仕方ないと。
— uPLayR (@Uplayr) February 20, 2019
アーティストは自分で営業をしない代わりに Spotify や Apple Music などのストリーミングプラットフォームの営業力を頼る事ができています。プラットフォームが集客をしてくれるわけです。
大きな面積の店舗の一角に、自分の作品を展示させてもらって、もし売れたら(再生さたら)その何割かの売上額が手に入るという仕組み。いわゆる軒先ビジネス。でもこの「何割」という比率が問題。
ダウンロードにしてもストリーミングにしても、入ってくる金額はプラットフォームサービス側に決定されています。楽曲の制作費に300万円かけたとしても、それを考慮した金額で販売することは出来ません。
仮に来店客数(有料顧客数)が増えたら販売単価も上げてくれるのかなあ?そこはどこかに公開されてるのかな?でもそこに出店してるお店(アーティスト)の数も増えてるから相対的に埋もれてしまってせっかくの営業力を活かしきれないかも。個別に営業をかけるとなると音楽家側にも営業コストかかる。
— uPLayR (@Uplayr) February 20, 2019
アーティスト側のコスパとは?
制作費が300万円だから、人件費含めて700万円という値段で、一人の顧客だけに売ろう。というアイディアも良いとは思いますが、まあ音楽なんで、多くの人に聴いてもらってこそ意味がありますね。
では、仮に1,000枚量産するから、1枚7,000円で売ろうというのでもあり。それなりの品質ならそういう売り方も良い。
でも、ストリーミング会社の方が権力が強いんで、[su_highlight]音楽家に決定権がありません[/su_highlight]。彼ら自身のサーバー管理代金、クラウドシステム開発維持費、営業マーケティング費、そして従業員の人件費、諸々あって彼らはそっちをまず確保する。納品してくれるアーティストには「稼ぎたければたくさんの再生数を確保せよ」ということです。
でも聴く人の事を考えてみて。
みんなどんな生活してるのかというと、仕事や学校の時間の他に、InstagramやYouTubeやSpotifyやTwitterなどのプラットフォームを行き来してアウトプットしたりインプットしたりしてる。そこに自分の手の込んだ作品を何回も聴いてもらうには?戦略を決めよう。ちなみに正解はないので好きな戦略でいい。
— uPLayR (@Uplayr) February 21, 2019
みんな時間がないんです。誰だって毎日たくさんのコンテンツをインプットして、たくさんのコンテンツをアウトプットする時代です。
- 一人の人が、一人のアーティストの曲を何回もリピート再生する。または
- たくさんの人が、一人のアーティストの曲を1回だけ聴く。
さてどうでしょう。世の中のアーティスト数も膨大なので、自分の曲を聴いてもらいたくても競争が激しくて、なかなか難しいですよね。
リスナーは、自分のテイストのサウンドやアーティストを「検索」して見つけるか、あるいはAIがレコメンドしてくれたアーティストを受動的に聴かされるだけ。後者の方が楽だけど、あまり能動的ではないですね。
しかもどのアーティストを聴いても、アプリのGUIは同じだし、ユーザー体験にバリエーションがない。
音楽家は自分たちでアプリ作ったら?とさえ思います。
レーベルコミュニティーの可能性
音楽家が自分でアプリ作ったところで、聴ける楽曲の数が少ない。リスナーはそんなアプリにユーザー登録してまで聴きたいでしょうか?
一人のアーティストだけで100曲も200曲も作れないとすると、同じテイストのアーティストが集まっている「レーベル」という存在があります。そのレーベルが独自にストリーミングサービスやその他グッズ販売などを手がけたらどうでしょう。
そんなら、ある程度音楽のテイストが似ていて共通した世界観をもったアーティストたちがレーベルを結成して、そのレーベル単体で営業と店舗を用意したらペイできないか、と考える。結局マーケティング費用や営業費用高いからあんま意味ないか。ならマーケティング改革でコストを下げたいよなあ。AIか…
— uPLayR (@Uplayr) February 20, 2019
音楽ビジネスはコスパが悪い?
同じ価値観のアーティスト(音楽に限らず)とファンが集まるコミュニティーのための有料チャンネルという位置づけなら、面白い事が起きそうなんだけどなあ。
顧客の日々の生活にメリットがなければお金は入ってきません。とにかく販売商品の価値を高めてあげないといけません。
仮に5分の曲があったとして、5分でどれだけ贅沢な体験をさせられるのか、で価格設定が決まってくるべきです。「絶対に最高の5分を体験できます。なぜならこの曲には〇〇が使われているからです」と解説できるようなもの。
実際にはリスナーは4万円の高額なヘッドホンで聴く人もいれば,4千円のヘッドホンで聴く人もいる。車のスピーカーで聴く人だっている。
リスニング環境が異なる全てのユーザーが良い音で聴けるように作るのは、ものすごく生産時間とコストがかかって、それをペイするのも難しいんですよね。
価値があるのは作品ではなく作者かもしれない
アーティストなら、「お金のためにやってない」と言い切れると、そこにこそ価値が芽生えてきたりします。
曲に価値が生まれるのではなく、その作者自身に価値が宿ると考えると、ファンはどうにかして[su_highlight]そのアーティストに作品を作り続けるようにと支援します[/su_highlight](その代わり、アーティストは作品制作以外の事には全くお金が使えないというハンデを背負って生きていきます)。
そう考えると、世の中には「お金」以外にも、別の定量的な尺度が隠れているような気がします。
インタビュアー
「違法ダウンロードによって、音楽の価値を軽んじられていることをどう思いますか?」ボブ・ディラン
「元々価値なんて無いんだから問題ないじゃないか。」 pic.twitter.com/WoourQT1UM— アーティストの作品と言葉 (@aart_bot) February 22, 2019