テクノというジャンルの魅力

Music

あるアーティストは、「音楽は生物(なまもの)」と表現しています。レコードやCD、ネット配信という形が変わっても、何も考えずに音を記録しただけのものは本来その音が持つ「生きた」エネルギーを止めてしまうインパクトがある気がします。

写真というものは、その被写体の息吹を一瞬にして時間を止めて封じ込めてしまうという、そのノスタルジックかつ切ない感じがまた魅力なのですが、音楽は単純にはいきません。そもそもが「そこ」にある空気を揺らしてこそ音が伝わる、つまり時間変化があって初めて価値があるものなわけです。

「録音・再生」という、違う時間帯の違う空気感の中にタイムスリップして再生させても、それを受け止めるリスナー側はその世界観の違いに違和感を覚える事があります(古臭いな、と感じる等々)。

そのためレコーディングエンジニアという専門職がいて、異なる音空間の中でも音を生き生きと再生させるための技術を提供している。つまり、アマチュアの人はリズムを叩いたりメロディーを歌う事はできても、綺麗に「記録する」のは敷居が高い。

ところで、「テクノ」というジャンルがあります。コンピューターを大々的に使って制作される音楽です。生演奏の人間的なライブ感を記録するのとは異なり、人間感のない規則的なリズムで、冷酷に演奏される音楽です。録音・再生が基本となるジャンルです。アマチュアの人でもテクノは取っ付きやすいです。

 

ただしこの「テクノ」が逆に野生生物の息吹を手に入れる事があります。プロフェッショナルなテクノアーティストの手によって。どうやったらあの無機的な機械たちが息吹を持ち始めるのでしょうか、という事でいくつかのTips。

 

  1. キーボーディストはついついメロディー弾いてしまうけど、ミニマルやりたければグッと我慢。コードも変えない、メロディーも弾かない。あえてメロディーっぽいの入れたい時は、人間が弾けなさそうなもの、ステップ入力したような細かいフレーズは良し。
  2. リズムと効果音が基本
  3. 複数のクリップ(シーケンスオブジェクト)が繋がって「息吹」を持つ。クリップの中身が手数が多いフレーズであれ、一発音であれ、どちらも重要なパーツ。
  4. 基本8小節ごとにリズムパターンは変化し、少しずつ楽曲が動きを見せる。
  5. メロディーパートが変化するとメロディアスな曲調に寄ってしまいテクノの「無機質感」から有機的な方向に寄っていくので注意が必要
  6. Aメロ、Bメロ、とはっきり展開を変え、変化が早く、ド派手なブラスが入ったり脅かしが入ったりしてはっきりと展開するものはポップ寄り、EDM寄りに寄っていきます
  7. ファンクに代表されるような「ため」のグルーヴを得るためドラムフィルは手数を足すより「引く」事がよくある。手数を「足す」とロックよりのエモーショナルな方向に牽引していく。
  8. 一つの楽曲には統一性も必要だし、さらに変化も必要。このさじ加減が難しい。とくにミニマルテクノは難しい。
  9. テクノはいわゆる人間の「歌」とはかけ離れた位置にある世界。ん?と思わせる展開でずっとじらされるから聴き入ってしまう中毒性の高い世界。単なる機械の演奏で終わらせられないところがセンスの見せ所。
  10. イントロなんてものは存在しない。1小節目からもう勝負は始まってる。一瞬でもつまらなくなったらそこで終わり。リスナーは別の曲に飛ばしてしまうことでしょう。
  11. ベースは同じ音程でルートのみで。上物は動いていいがなるべく先読みできないように、人間ぽくならないように。全てのシンセはこもり気味で、くっきりするのはハットなどの金物のみで。
  12. テクノは16部音符だらけになりがちだからそのままだとうるさくて聴けたものではない。ベロシティーを変えたり、重なる音の数を変えたりして強弱を表現する。音価の長いフレーズは効果あり。
  13. サビで盛り上げた後でどのように「静めるのか」はとても重要な技術。
  14. Aメロ、Bメロなどのバースごとにリズムのアクセントポイントを変える事で、同じリズムパターンなのに変化を生み出すこともできる。例えばAメロでは8分裏にアクセントを置いていたのに、Bメロでは表ビート(1拍目や3拍目)にアクセントを置くなど。
  15. スマホのスピーカーなどで「とりあえずプレビュー再生」される文化を侮れないわけなので、低域のキックとベースで展開を作るのではなく、中高域の楽器で展開を作らなくてはいけない
  16. ハイハットはアクセント。そういう性格。入れまくるとアクセントにならない。
  17. アシッドってコード進行で悩まなくていい分展開させていくのが難しい。ジャズのインプロビゼーションに近い
  18. DJが曲順でフロアを熱くするというがそれはバンドのライブも同じ事で、曲順を考えるのはある意味でスキルとも言えるはず。かたや作曲する人が曲の展開を考えるのと同じ事。
  19. 一人でパフォーマンスする「DJ」と、複数の人がパフォーマンスする「バンド」の大きな違いとして、他人とのアンサンブルやセッション感覚があげられるかもしれない。他人とコラボレーションするのって、特定のスキルが要求される。

 

 

 

 

 

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