ムーンライトダンスの曲調が宇宙に浮遊していると感じてしまう理由
Aメロ
「C#m / E / A / F#m」(ラジオから流れてくる)
これは正しいキーをわからなくする、いわゆる「騙し絵」的な技。宇宙空間を浮遊するような、引力のないフワフワした世界を作ります。
C#mから始まるので、最初はC#マイナーだと思ってしまうんですが、実はこれ、C#マイナーキーを色濃く見せているものの実は、F#マイナーキーの骨格が見え隠れしています。この曲の宇宙的な浮遊感はここから来ていると言えると思います。
ここではベースが2拍ずつ変わっているので、4つのコード全てが均等なバランスを保っています。
「C#m / E / A / F#m」(ラジオから流れてくる)
「C#m / E / A / F#m」(あのOld Fashioned Love Song)
「C#m / E / A / F#m」(たとえ5年たっても)
「C#m / D / A 」(10年たっても)
「F#m / G#m / C#m」(君のとなりにいたい)
これを重力表記(と勝手に読んでますが、いわゆる数字表記)に置き換えると、頭の「C#m」が「VIm」なのか「IIIm」なのかわからなくなる技法だということに気が付くと思います。「IIIm」で始まると、これは主張の弱いトニック和音であるので、結構ふんわりした感触が生まれますね。
[C#マイナー解釈の場合]:最初はこう感じるはずです。
「VIm / I / IV / IIm 」(ラジオから流れてくる)
「VIm / I / IV / IIm 」(あのOld Fashioned Love Song)
「VIm / I / IV / IIm 」(たとえ5年たっても)
「VIm / VI# / IV 」(10年たっても)
「IIm / IIIm / VIm 」(君のとなりにいたい)
となります。「10年たっても」のところに突然現れる「D」つまり「VI#」はどこから来たのか??の答えは以下の通りでF#マイナー解釈にするとわかります。
[F#マイナー解釈の場合];こうも解釈できるのです。
「IIIm / V / I / VIm 」(ラジオから流れてくる)
「IIIm / V / I / VIm 」(あのOld Fashioned Love Song)
「IIIm / V / I / VIm 」(たとえ5年たっても)
「IIIm / IV / I」(10年たっても)
「VIm / VIIm / IIIm 」(君のとなりにいたい)
と、「10年たっても」は何も問題はない事になりますが、そうするとむしろ「君のとなりにいたい」に現れる「G#m」つまり「VIIm」が違和感が出るはずなのですが、BメロへはここからC#マイナーの色を強くして流れていくので自然に体が受け入れてしまいます。
Bメロ
ここからポップスの定番コードになるので現実に帰ってきます。が、実はさっきのAメロの騙し絵に騙され、ここからC#マイナーキーに転調してます。
「AM7 / B7 / E / C#m 」(いつの日か 大人になると ステキなことは もっとステキに)
「A / G#m / C#m」(動き出すと 思っていた Old Fashioned Love Song For You)
これを重力表記にすると、
「IVM7 / V7 / I / VIm」(いつの日か 大人になると ステキなことは もっとステキに)
「IV / IIIm / IVm」(動き出すと 思っていた Old Fashioned Love Song For You)
Cメロ(サビ)
ここで半音上のDマイナーキーに転調します。
「Dm / Bb / C / F」(いつか新しい ムーンライトダンス)
「Dm / Bb / C / F」(ぼくと踊ってみませんか)
「Dm / Bb / C / F」(振り返るだけじゃだめさ)
「Dm / Bb / Gm / Am」(今日という日のために)
重力表記に置き換えると、
「VIm / IV / V / I」(いつか新しい ムーンライトダンス)
「VIm / IV / V / I」(ぼくと踊ってみませんか)
「VIm / IV / V / I」(振り返るだけじゃだめさ)
「VIm / IV / IIm / IIIm」(今日という日のために)
間奏
ここで半音下げて、Cマイナーキー風のF#マイナーキーに戻します。
このように、ムーンライトダンスは宇宙の月の雰囲気を出すために、重力をなくしてフワフワ浮いた世界を表現するのに成功しているというわけですね。
また、美里ちゃんの、男の子の声にも、女の子の声にも聞こえる中性的な歌声がこの曲の宇宙的・神秘的なカラーをさらに強め、さらにそこに激しいドラムとギターによる近未来風のビートで楽しませてくれるという、なんとも美しい楽曲です。